
会社の経営は、人によって成り立っています。
社員が体調を崩し、長期間休むことになれば、その業務を誰かが引き継がなければなりません。
特定の社員しか分からない仕事であれば、業務そのものが止まることもあります。
人材不足の会社であれば、代替要員をすぐに確保することも簡単ではありません。
つまり、
社員の健康は、社員個人だけの問題ではなく、会社の安定運営にも関係する問題です。
もちろん、病気になることを完全に防ぐことはできません。
会社が社員の健康状態をすべて管理することも現実的ではありませんし、そうするべきでもありません。
大切なのは、
社員が健康を維持しやすい環境を会社側がつくること
ではないでしょうか。
社員のQOL(生活の質)が高まれば、結果として会社のQOL、つまり組織としての働きやすさや持続性も高まります。
健康を「本人任せ」にしすぎない
健康管理は基本的には個人の責任です。
しかし、会社員は1日の多くの時間を職場で過ごします。
例えば、
- 一日中座りっぱなし
- 昼休みを十分に取れない
- 残業が多い
- 有給休暇を取りにくい
- 体調が悪くても休みにくい
- 常に仕事の連絡が入る
といった環境であれば、個人が健康に気を付けていても限界があります。
逆に、
- 適度に身体を動かせる
- 休憩を取りやすい
- 残業が少ない
- 休暇を取りやすい
- 健康について相談できる
という会社であれば、社員は健康的な生活を続けやすくなります。
会社がやるべきことは、社員の私生活を監視することではありません。
健康的な選択をしやすい職場をつくることです。
その基本として考えやすいのが、
- 栄養
- 運動
- 休息
の3つです。
1.栄養――身体を維持するための基本
毎日の食事は、身体をつくり、仕事を続けるための基礎です。
タンパク質、脂質、炭水化物などを適切に摂り、過不足の少ない食生活を続けることが基本になります。
特に年齢を重ねると、筋肉量や筋力は低下しやすくなります。
そのため、適切なタンパク質の摂取と運動を組み合わせ、筋肉を維持していくことは重要です。
ただし、
「糖質を取らなければいい」
「脂質を減らせばいい」
「タンパク質を大量に取ればいい」
という単純な話ではありません。
大切なのはバランスです。
会社としても、
- 健康的な食事について情報提供する
- 社員食堂があればメニューを工夫する
- 健康診断後の相談機会を設ける
- 管理栄養士など専門家へ相談できる仕組みをつくる
といった支援が考えられます。
アルコールについても正しい知識を
飲酒についても、健康との関係を知っておく必要があります。
過度の飲酒は、肝臓をはじめとする臓器への負担だけでなく、高血圧、体重増加、高尿酸血症、睡眠の質の低下などにつながる可能性があります。
特に、
「酒を飲むとよく眠れる」
という認識には注意が必要です。
アルコールによって寝つきが早くなる場合はありますが、睡眠が浅くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりすることがあります。
その結果、睡眠時間は確保しているのに疲れが取れない、ということも起こり得ます。
ただし、会社が社員の私生活での飲酒量まで細かく管理するのは適切ではありません。
勤務中の飲酒や飲酒運転など、業務に直接関係する行為は明確に禁止する必要があります。
一方、私生活については、
管理ではなく、正しい情報提供や相談支援
を基本にするべきでしょう。
2.運動――会社の中でもできることは多い
健康維持のためには、身体を動かすことも重要です。
しかし、
「毎日ランニングする」
「スポーツジムへ通う」
といった本格的な運動だけが必要なわけではありません。
会社の中でも、簡単な身体活動はできます。
例えば、
1~2階程度なら階段を使う。
これだけでも日常的な運動になります。
もちろん、膝や腰に問題がある人、持病がある人、怪我をしている人に無理をさせるべきではありません。
あくまで、
できる人が、無理のない範囲で行う
ことが基本です。
デスクワークでは「座りっぱなし」を減らす
パソコンを使う仕事では、気が付くと数時間座り続けていることがあります。
そこで、
- コピーを取りに立つ
- 水を飲みに行く
- 軽くストレッチする
- 少し歩く
- 立って電話する
など、一定時間ごとに座った状態を中断するだけでも違います。
特に重要なのは、
運動の時間をわざわざ作ることだけでなく、仕事の中で身体を動かす機会を増やすこと
です。
会社としても、
「仕事中に立つのはサボっている」
ではなく、
「長時間座り続けないことも健康管理の一部」
という認識を持つことが必要です。
筋力の維持は将来の働き方にも関係する
年齢とともに筋力は低下しやすくなります。
筋力が落ちれば、
- 階段がつらい
- 長時間立つのがつらい
- 疲れやすい
- 転倒しやすい
といった問題も起こりやすくなります。
軽いスクワットや自重トレーニングなどを習慣化するだけでも、身体機能の維持には役立ちます。
会社としても、
- フィットネスクラブとの法人契約
- スポーツ施設利用料の補助
- 簡単な運動器具の設置
- 昇降式デスクの導入
- 昼休みのウォーキング推奨
など、さまざまな方法を考えられます。
大切なのは設備そのものではありません。
運動することを肯定する職場の雰囲気
です。
昼休みに散歩する人を、
「暇なのか」
と見る会社と、
「健康管理をしている」
と見る会社では、社員の行動も変わってきます。
3.休息――「休むこと」を悪いことにしない
健康を考えるうえで、休息は非常に重要です。
肉体的な疲労だけでなく、
- 集中力
- 判断力
- 精神的な余裕
- 意欲
も、休息が不足すると低下します。
疲労した状態で長時間働き続ければ、
- ミスが増える
- 判断を誤る
- 生産性が落ちる
- 人間関係が悪化する
- 事故につながる
といった問題も起こりやすくなります。
そのため、
長時間働く社員を評価する会社より、必要な休息を取りながら安定して働ける会社の方が強い
と考えた方がよいでしょう。
会社ができることとしては、
- 不必要な残業を減らす
- 有給休暇を取りやすくする
- 昼休みを確実に取れるようにする
- 長時間労働を把握する
- 勤務時間外の連絡を減らす
- 体調不良時に休みやすくする
といった改善があります。
これらは福利厚生というより、
会社の運営リスクを減らす仕組み
と考えることもできます。
「休みがちな社員」を本人だけの問題にしない
社員の欠勤が増えたとき、
「自己管理ができていない」
「やる気がない」
と簡単に判断してしまうのは危険です。
原因は、
- 身体的な病気
- 睡眠不足
- 精神的な不調
- 家庭の事情
- 介護
- 職場の人間関係
- 業務量の過多
など、さまざまです。
もちろん、会社が病気を診断することはできません。
しかし、
「なぜ休むのか」
ではなく、
「仕事の側に改善できる問題はないか」
と考えることはできます。
これは健康問題だけでなく、業務改善そのものです。
一人に仕事を集中させないことも重要
社員の健康を考えるのであれば、同時に業務の属人化も減らす必要があります。
どれだけ健康に気を付けても、人は病気にもなりますし、怪我もします。
家族の介護で休むこともあります。
そのため、
- マニュアルを作る
- パスワードや契約情報を適切に共有する
- 複数人が業務を理解する
- 引き継ぎ可能な仕組みにする
- データを個人PCだけに保存しない
といった対策も必要です。
つまり、
「社員を病気にさせない」ことだけが対策ではありません。
誰かが休んでも仕事が止まらない会社をつくることも、社員と会社の双方を守ることにつながります。
健康情報は人事評価の材料にしない
健康施策を行う際には、もう一つ重要な点があります。
健康状態は非常に個人的な情報です。
会社が、
- 体重
- 飲酒習慣
- 持病
- 精神的な不調
などを必要以上に収集し、人事評価へ結びつけるようなことは避けるべきです。
健康づくりの目的は、
社員を選別することではなく、働き続けやすい環境をつくること
です。
必要な健康情報を扱う場合も、利用目的や閲覧できる人を限定し、慎重に管理する必要があります。
個人の健康は、会社の健康につながる
社員が健康であることは、本人にとって重要です。
そしてその家族にとっても重要です。
結果として、
- 長期離脱の減少
- 業務の安定
- ミスや事故の防止
- 生産性の維持
- 人材の定着
- 採用力の向上
など、会社にも多くのメリットがあります。
ただし、
健康だから会社に貢献できる
という順番で考えるべきではありません。
まず、
社員が健康で生活できること自体に価値がある。
その結果として、会社も安定する。
この順番が大切だと思います。
会社が社員の私生活を管理する必要はありません。
しかし、
健康でいたい人が、健康でいられる会社をつくることはできます。
社員のQOLを高めることが、最終的には会社のQOLを高める。
健康管理もまた、会社の業務改善の一つとして考えてよいのではないでしょうか。
関連リンク
従業員の健康情報を扱う際の基本を確認するには、個人情報を参照してください。