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レシートを虫眼鏡で確認するアイペンちゃんと、カード明細・出張予定・店舗情報との照合を案内する青いフクロウ

コラム

生成AIで偽造されたレシートは見抜ける?――これからの経費精算は「画像確認」から「取引照合」へ

レシートを虫眼鏡で確認するアイペンちゃんと、カード明細・出張予定・店舗情報との照合を案内する青いフクロウ

生成AIの進化によって、文章や写真だけでなく、レシートや領収書のような「証拠として使われる画像」まで簡単に作れる時代になりました。

店名、日時、商品名、金額、消費税、合計金額。

さらに、レシート用紙の質感や印字のかすれ、折れ目、影まで含めて自然な画像を生成できるようになっています。

これまでなら、

「フォントがおかしい」

「文字の位置がずれている」

「画像に違和感がある」

といった点から偽造を疑うことができました。

しかし、生成AIの性能向上によって、人が見ただけでは本物と偽物を区別することが難しくなりつつあります。

では、企業の経費精算ではどう対応すればよいのでしょうか。

結論から言えば、

「レシート画像が本物か」を見破ろうとするだけではなく、「その取引が本当に存在したのか」を確認する仕組みに変えていく必要があります。

4コマ漫画「AI偽造レシート、どう見抜く?」。本物に見える画像でも、決済記録・移動や出張記録・購入先の取引履歴を照合し、AIが見つけた不自然な点を最後に人が確認する。
画像の見た目だけで判断せず、複数の取引記録を照合し、最後は人が確認します。

「見た目が本物」は、もう証明にならないかもしれない

従来の経費精算では、

社員がレシートを提出し、経理担当者が内容を確認する。

という方法が一般的でした。

紙のレシートであれば、ある程度は

  • 印刷状態
  • 店舗名
  • 日付
  • 金額
  • 商品名
  • 消費税
  • レシートの形式

などを確認できます。

ところが生成AIでは、これらをまとめて作ることができます。

さらに、「きれいすぎるレシート」だけではありません。

少し曲げる。

印刷をかすれさせる。

机の上に置いて撮影したようにする。

照明の影を付ける。

こうした加工まで含めて生成できるため、

「写真として自然だから本物」

とは言えなくなってきました。

AIに「これはAI画像ですか?」と聞けば解決するのか

ここで考えたくなるのが、AIによるAI画像判定です。

生成されたレシートを別のAIに読み込ませ、

「これはAIで作った画像でしょうか?」

と判定させる方法です。

しかし、これだけに頼るのは危険です。

AI画像検出はあくまで特徴から推測するものであり、すべての画像について確実に生成AIかどうかを判定できるわけではありません。

本物のレシートを偽物と判断する「誤検知」もあれば、AI生成画像を本物と判断する可能性もあります。

NISTの報告書でも、生成画像の検出精度は画像の性質や圧縮、生成元などによって変わると整理されています。出典:NISTの生成コンテンツに関する報告書

したがって、

AI生成かどうかを見抜く技術は補助的なチェックとして利用し、それだけで経費を承認・否認しない

という運用が重要になります。

本当に確認すべきなのは「画像」ではなく「取引」

ここで考え方を変える必要があります。

確認したいのは、

このレシート画像は本物なのか?

ではありません。

本当に確認したいのは、

この取引は実際に行われたのか?

ということです。

例えば、次のような宿泊費のレシートが提出されたとします。

○○ホテル
2026年9月10日
宿泊費 12,800円

レシート画像だけを見れば、本物にしか見えないかもしれません。

しかし、ほかの情報と照合するとどうでしょう。

  • 法人カードに12,800円の利用履歴があるか
  • 出張申請が提出されているか
  • 宿泊予約記録があるか
  • 当日の勤務・出張予定と一致しているか
  • ホテルが実際に存在するか
  • 適格請求書発行事業者の登録番号が正しいか
  • 金額や利用日時に矛盾がないか

こうした情報まで確認すれば、レシート画像だけを見るより不正や入力ミスを発見する手がかりが増えます。

ただし、店舗の実在や登録番号の一致は、その取引が実際にあったことを証明するものではありません。カード明細も、業務上必要な支出かどうかまでは示さないため、利用目的や社内規程と合わせて確認します。

これからの経費精算は「多層チェック」へ

例えば次のような確認方法が考えられます。

確認方法不正検出への有効性(目安)
レシートの目視確認△
AI画像判定△
OCRによる内容確認○
店舗情報との照合○
インボイス登録番号との照合○
出張・勤務予定との照合○
法人カード利用履歴との照合◎
電子決済履歴との照合◎
POS・取引データとの照合◎

※記号は検出率の実測値ではなく、確認方法の役割を示す目安です。△は補助的な確認、○は記載内容や周辺情報の整合性確認、◎は独立した取引記録との照合を表します。OCR自体は文字を読み取る機能で、取引の実在を判定するものではありません。POSなどの取引データは、取得権限や連携の仕組みがある場合に利用できます。

重要なのは、一つの方法だけで判断しないことです。

複数のデータを組み合わせ、

取引の整合性を見る

という考え方になります。

AIは不正を作る側だけではなく、防ぐ側にも使える

生成AIによる偽造が問題になる一方で、AIは経費精算を守る側にも利用できます。

例えば、

レシート
↓
AI-OCRで読み取り
↓
店舗・日時・金額を抽出
↓
法人カード明細と照合
↓
出張申請と照合
↓
過去の申請パターンと比較
↓
不自然な申請だけを経理担当者へ通知

という仕組みです。

現在の経費精算サービスでも、AIを使って領収書から伝票を作成する機能や、証憑の読み取り・承認を支援する機能が拡充されています。2026年9月11日時点で、楽楽精算は「伝票作成AIエージェントオプション」のPC対応を9月15日に予定しています。TOKIUMでも、領収書と申請の金額・日付などを照合する承認支援機能が提供されています。楽楽精算のリリース予定/TOKIUMの承認支援機能

つまりAIは、

「経理担当者の代わりにすべてを判断するもの」

というより、

「大量の申請の中から、人が確認すべきものを見つけるもの」

として使う方が現実的です。

「自動化したから安心」ではない

もう一つ注意したいのが、AIやOCRを組み込んだ経費処理そのものにも間違いがあることです。

2026年8月26日に公開された経費処理自動化の実践記録では、合計447円のレシートを処理したプログラムが36円を出力したケースが紹介されています。筆者の説明では、原因はOCRの数字の誤読ではなく、読み取った数字と項目の対応を扱うコードにあり、消費税額の17円と19円を合計してしまったものでした。出典:Hiromitsu Jin氏の実践記録

エラーとして停止するのではなく、もっともらしい数字として処理されてしまうことが自動化の怖さでもあります。

したがって、

「AIに任せれば人間の確認は不要」

ではなく、

AIの結果を別のデータやルールで機械的に検算する

という仕組みが必要です。

法人カードとの連携は強力な対策になる

特に企業で有効なのが、法人カードや電子決済との連携です。

従来は、

支払い
↓
レシートを受け取る
↓
撮影
↓
経費申請
↓
経理が確認

という流れでした。

これを、

法人カードで支払い
↓
カード会社から取引データ取得
↓
経費精算システムへ自動登録
↓
レシートと取引データを照合

という形にすれば、単純なレシート画像の偽造だけでは不正を成立させにくくなります。

レシートそのものを「唯一の証拠」とするのではなく、

レシートを取引情報の一つとして扱う

という考え方です。

小さな会社でもできる対策

高度な経費精算システムを導入しなくても、対策はできます。

例えば、

  • 高額経費だけカード明細との照合を必須にする
  • 出張費は出張申請番号と紐付ける
  • 同一レシートの重複申請をシステムで確認する
  • OCRで店舗・日時・金額を自動抽出する
  • 一定金額以上だけ人が重点確認する
  • 不自然な金額や時間帯をAIで抽出する

といった方法です。

すべてをチェックするのではなく、

「怪しいものだけ人間に見せる」

という設計にすれば、経理担当者の確認を必要な申請に集中させ、負担を抑えながら内部統制を強化できます。

まずは一部の経費で試し、確認時間、誤検知、見逃しを点検します。抽出されなかった申請も抜き取りで確認し、データ不足や不一致は即否認せず、本人への確認に回します。取引情報をAIに渡す場合は、会社が認めたサービスと必要な範囲のデータを使い、閲覧権限や保管先も決めておきます。

生成AI時代には「証拠」の考え方も変わる

生成AIの進化によって、画像や文書を作ること自体はますます簡単になります。

これはレシートに限った話ではありません。

  • 領収書
  • 請求書
  • 契約書
  • 証明書
  • 商品写真
  • 作業報告写真
  • スクリーンショット

なども同じ問題を抱える可能性があります。

これまで私たちは、

「画像があるから証拠になる」

と考えてきました。

しかしこれからは、

「画像だけでは証拠として十分ではない場合がある」

という前提で業務を設計する必要があります。

業務改善として考えるべきこと

生成AIによる偽造への対策を、

「AIを禁止する」

「すべて疑う」

という方向だけで考える必要はありません。

むしろ、

人が目で確認していた業務を、複数のデータで確認する仕組みに変えるきっかけ

として考えることができます。

これまで

レシートを見る
↓
問題なさそう
↓
承認

これから

レシートを読み取る
↓
取引データと照合
↓
不整合を自動検出
↓
必要なものだけ人が確認
↓
承認

生成AIによって偽造技術が進化するのであれば、

確認する仕組みも同時に進化させればよいのです。

まとめ

生成AIで作られた精巧なレシートを、画像だけから100%確実に見抜くことは難しくなっています。

だからこそ、

「AI画像を見破る技術」だけを追いかけるのではなく、「その取引が本当に存在することを確認する仕組み」を作ることが重要です。

レシート、カード明細、出張申請、店舗情報、決済データ。

それぞれ単独では完全ではなくても、複数の情報を組み合わせれば信頼性を高めることができます。

生成AIによって「本物そっくりな画像」が簡単に作れる時代。

企業側にも、

目で見る確認から、データで裏付ける確認へ。

そんな業務改善が求められているのではないでしょうか。

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