
インターネットで見つけたイラストを、確認せずに会社の広報誌やWebサイトへ掲載する。
これは、思っている以上に大きな問題になる可能性があります。
「無料だと思った」
「検索結果に出てきた」
「小さく一度使っただけ」
「すぐに削除した」
このような事情があっても、無断使用の事実がなくなるわけではありません。
制作物に対する著作権は、私たちが考えているより厳格です。今後、企業が広報誌、Webサイト、SNS、チラシなどでイラストを使う場合は、出所と利用条件を確認する仕組みが必要です。
その対策の一つとして、生成AIによるイラスト制作は有効だと考えます。ただし、生成AIで作れば著作権上の問題が完全になくなるわけではありません。正しい使い方と確認が必要です。
6年前の広報誌に使った一つのイラスト
先日、クライアントからイラストの無断使用について相談を受けました。
問題となったのは、約6年前に100部程度印刷した広報誌です。その中の一か所に、使用許諾を確認していないイラストが掲載されていました。
広報誌は毎月発行されています。過去の号から現在の号まで調べ直したところ、該当したのはその1件だけでした。
ただし、印刷物だけで終わっていたわけではありません。広報誌をPDFにして、インターネットから閲覧できる状態にしていました。これが無断使用の発覚につながったようです。
通知を受けた後、クライアントはPDFを直ちに削除し、現在は閲覧できない状態にしました。その旨を連絡したところ、35万円の請求が届きました。現在は会社の顧問弁護士へ相談し、減額交渉を検討しています。
ここで、請求額が妥当かどうかについて私が判断することはできません。
参考にしたSTORIA法律事務所の記事では、無断使用が著作権侵害になり得ることと、権利者側が設定した料金が常にそのまま損害額として認められるかは別の問題であることが解説されています。市場相場、料金の設定根拠、販売実績などが判断材料になる可能性があります。
一方で、「料金が高いと思うから支払わなくてよい」という話でもありません。個別の事情によって判断が変わるため、請求を受けた場合は自分だけで回答せず、証拠と経緯を整理して弁護士へ相談する必要があります。
AIによって過去の無断使用も見つかりやすくなる
これからは、イラストや写真の無断使用が、さらに発見されやすくなると思います。
以前は、権利者がWebサイト、PDF、SNSなどを一つずつ確認し、自分の作品が使われていないか探す必要がありました。しかし現在は、画像検索、類似画像の照合、自動巡回などにAIを活用できます。
目視では見落としやすい小さな画像、加工された画像、何年も前に公開されたPDFであっても、元の作品との類似性を機械的に探しやすくなっています。
そのため、無断使用そのものが急に増えなくても、これまで発見されなかった使用が見つかり、請求を受ける件数は増える可能性があります。
「古い資料だから見つからない」
「閲覧者の少ないページだから問題にならない」
「画像を小さく使っているから分からない」
このような考え方は、今後さらに通用しにくくなります。
AIは制作する側だけが使うものではありません。著作物を管理し、無断使用を探す側にとっても有効な道具です。公開中の古いPDFやWebページに出所不明の画像が残っていないか、今のうちに確認した方がよいと思います。
削除しても、過去の使用がなくなるわけではない
通知後に画像やPDFを削除することは必要です。被害の拡大を止める意味があります。
しかし、削除したからといって、それまでの掲載や配布の事実までなくなるわけではありません。
今回のように、次の条件が重なることもあります。
- 印刷部数は100部程度
- 使用箇所は一か所
- 掲載は約6年前
- 現在は使っていない
- Web上のPDFから確認できた
担当者からすれば、かなり前の小さな作業だったかもしれません。それでも、会社として対応しなければなりません。
必要になるのは、請求額だけではありません。
- 過去の広報誌やWebサイトの調査
- 担当者や制作会社への確認
- PDFや画像の削除
- 権利者との連絡
- 顧問弁護士への相談
- 社内への説明
- 再発防止策の作成
本来の業務とは別に、相当な時間と労力がかかります。直接的な使用料より、この対応負担の方が大きくなる場合もあります。
「フリー素材」という言葉を信用しすぎない
フリー素材は、何をしても自由な素材という意味ではありません。
サイトによって利用条件が異なります。
- 商用利用できるか
- 印刷物に使えるか
- WebサイトやSNSに使えるか
- 利用点数に制限があるか
- クレジット表記が必要か
- 加工できるか
- 顧客へ納品する制作物に使えるか
- 再配布やテンプレート利用が禁止されていないか
無料でダウンロードできても、すべての用途が許可されているとは限りません。
画像検索の結果画面、まとめサイト、Pinterest、SNSなどは、利用許諾を確認する場所ではありません。そこに画像が表示されていることと、自社が使ってよいことは別です。
使用する場合は、元の配布サイトと利用規約を確認し、その記録を残す必要があります。
問題は「確認したつもり」で終わること
企業で起きやすいのは、担当者ごとに判断が違うことです。
ある人は有料素材サイトから購入する。別の人は画像検索から保存する。さらに別の人は、以前の広報誌に使われていた画像だから問題ないと考えて再利用する。
これでは、いつか確認漏れが起きます。
最低限、画像を使用するときは次の情報を残すべきです。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 画像の出所 | 配布元のサイト名とURL |
| 取得日 | ダウンロードまたは購入した日 |
| 利用条件 | 商用利用、加工、クレジット表記の条件 |
| 証拠 | 利用規約のPDF、画面保存、購入履歴 |
| 使用先 | 広報誌、Webサイト、SNSなど |
| 担当者 | 確認した人と使用を承認した人 |
利用規約は後から変更される場合があります。そのため、URLだけでなく、使用時点の規約をPDFや画面保存で残す方が安全です。
そこで生成AIを使う
毎回イラストレーターへ依頼するのが最も確実な方法の一つですが、予算や納期の都合で難しい場合もあります。自分で描ければよいのですが、すべての担当者が描けるわけでもありません。
ここで、生成AIが役に立ちます。
生成AIに、イラストの内容、構図、色、雰囲気、用途などを具体的に指示すれば、必要なイラストをその都度作れます。
例えば、次のような指定ができます。
中小企業の社内広報誌に使用する横長のイラスト。事務所で3人の社員が安全確認のチェックリストを見ている。濃紺の輪郭線、白と淡い青を基調とした清潔な配色。文字、ロゴ、既存キャラクターは入れない。親しみやすいが子ども向けにはしない。
既存のイラストを探して利用条件を確認する作業が減り、記事や会社の雰囲気に合わせた素材を作れます。色や構図の修正もしやすく、同じテイストで複数の画像をそろえることもできます。
同じテイストを繰り返すために、指示をスキルへまとめる
同じテイストのイラストを継続して作る場合は、毎回の会話だけで指示するのではなく、ChatGPTやCodexで使うスキルのSKILL.mdに、配色、輪郭線、人物表現、構図、禁止事項、用途、確認項目をまとめておく方法があります。画像を作るときにそのスキルを指定すれば、共通条件の指示漏れを減らし、同じテイストを再現しやすくなります。
例えば、次のようなスキルを用意します。
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name: company-illustration
description: 会社の記事や広報誌に使う、統一テイストのイラストを作るときに使う。
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# 共通テイスト
- 横長の業務用イラストにする
- 濃紺の輪郭線を使う
- 白と淡い青を基調にする
- 親しみやすくするが、子ども向けにはしない
- 文字、ロゴ、既存キャラクターは入れない
# 作成手順
1. 用途、場面、人物、動作を確認する
2. 共通テイストを反映して画像を作る
3. 文字やロゴが混入していないか確認する
4. 記事や広報誌に合う構図か人が最終確認する
生成結果にはばらつきがあるため、スキルだけに任せず、基準にする画像と確認項目も一緒に用意し、使用前に人が確認します。
業務改善という点では、かなり大きな効果があります。
生成AIで作ったイラストの著作権はどうなるのか
ここは誤解しやすい部分です。
日本の文化庁は、AI生成物が著作物に当たるかどうかについて、人間の「創作的寄与」が認められるかを個別に判断する考え方を示しています。
簡単な指示を入力し、AIがほぼ自動的に出力しただけの場合、その画像自体に著作権が成立しない可能性があります。
一方で、人が次のような作業を重ねた場合は、創作的寄与が認められる可能性があります。
- 構図、配色、配置、表現方法を具体的に設計する
- 出力結果を見ながら指示を何度も修正する
- 複数の生成結果を選択し、組み合わせる
- 人が加筆、修正、加工する
- 企画全体として独自の表現を作る
ただし、「何回指示すれば著作権が発生する」といった明確な回数基準はありません。最終的には個別判断です。
ここで区別したいのは、次の二つです。
- そのAI画像を業務で使用できるか
- そのAI画像を自社の著作物として独占的に保護できるか
これは同じではありません。
利用している生成AIサービスの規約で商用利用が認められていれば、業務用の広報誌やWebサイトで使える場合があります。一方、AI生成物に著作権が成立しなければ、似た画像を他者が使用したときに、自社の著作権を根拠として止めることが難しい可能性があります。
+主な画像生成AIサービスの商用利用条件
以下は2026年8月30日時点の公式情報をもとにした整理です。「商用利用できる」という表示は、生成画像に必ず著作権が成立することや、第三者の著作権・商標権・肖像権を侵害しないことを保証するものではありません。実際に使う時点で、利用中のプラン、機能、モデルの最新規約を確認してください。
| サービス | 商用利用 | 無料プラン | 権利・主な条件 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT/OpenAI画像生成 | ○ | ○ | OpenAIとの関係では、入力の権利を利用者が保持し、出力は利用者に帰属します。規約・利用ポリシーの遵守が必要です。OpenAI利用規約 |
| Adobe Firefly | ○ | ○※ | ベータ表記のない機能は商用利用可能です。ベータ機能も、製品内で明示的に禁止されていなければ商用利用できます。Adobe Firefly FAQ |
| Midjourney | ○ | ×(通常のWeb版・Discord版) | 年間総収益100万米ドル超の企業は、ProまたはMegaプランが必要です。他人が生成した画像をアップスケールしただけの場合は、その生成者の許可が必要です。商用利用ガイド |
| Google Gemini | ○と判断可能 | ○ | Googleは生成されたオリジナルコンテンツの所有権を主張しません。Google利用規約・生成AI禁止用途ポリシーの遵守が必要です。ただし、商用利用権の表現は明確ではなく、職場・学校アカウントは契約条件が異なる場合があります。Gemini画像生成ヘルプ・Google利用規約 |
| Google ImageFX(labs.google/fx) | ○と判断可能 | ○ | Googleは生成したオリジナルコンテンツの所有権を主張しません。利用時はGoogle利用規約全体の確認が必要です。labs.google/fx FAQ |
| Canva Magic Studio | ○ | ○※ | AI生成物は個人・商用目的で利用できます。AI製品規約とコンテンツライセンスの遵守が必要です。Canva素材を組み合わせた場合は、その素材のライセンスも確認します。Canva公式ガイド |
| Ideogram | ○ | ○ | Ideogramは生成画像の所有権を主張せず、商用を含む任意の目的に利用できます。セルフホスト用モデルのライセンスは別に確認が必要です。Ideogram料金・権利FAQ |
| Leonardo.Ai | ○ | ○ | 無料プランでも商用利用できます。ただし、無料生成物は公開され、Leonardo.Ai側が権利を持ち、利用者には商用利用ライセンスが与えられます。有料プランでは非公開生成を選べます。Leonardo.Ai公式解説 |
| Runway | ○ | ○ | 無料プランを含む各プランで、利用者はアップロード・生成したコンテンツの権利を保持し、Runwayによる非商用制限はありません。Runway利用権FAQ |
| Stable Diffusion/Stability AI | ○※ | ○※ | Community License対象モデルは、年間収益100万米ドル未満なら無料で商用利用できます。100万米ドル以上はEnterprise Licenseが必要です。利用するモデルごとのライセンスも確認します。Stability AI License |
| Microsoft Designer(個人向け) | × | ○ | 個人向けMicrosoft Designerは、個人・非商用利用として案内されています。Bing Image CreatorやMicrosoft 365内の画像生成機能は別の条件が適用されるため、使用する製品・機能の現行規約を個別に確認してください。Microsoft Designer FAQ |
※無料枠の有無、生成回数、非公開設定、利用できるモデルは変更されることがあります。商用利用前には、利用日時点の規約ページをPDFや画面保存で残してください。
したがって、記事の挿絵や説明用画像には使いやすい一方、会社のロゴ、商品ブランドの中心となるキャラクター、独占利用したい重要なビジュアルについては、人による制作や十分な加筆・設計を含めて検討する必要があります。
生成AIなら無条件に安全というわけではない
生成AIを使った場合でも、出力画像が既存の著作物に類似し、その著作物に依拠して作られたと判断されれば、著作権侵害になる可能性があります。文化庁も、AI生成物の利用段階では、通常の著作権侵害と同様に「類似性」と「依拠性」が問題になるとの考え方を示しています。
特に避けるべきなのは、次の使い方です。
- 特定の現役作家やイラストレーターの作風をそのまま指定する
- 著作権のあるイラストを無断で参照画像として入力する
- 有名キャラクターに似せて生成する
- 既存作品の一部だけを変更して使う
- 出力画像にロゴ、透かし、署名らしきものがあるのに、そのまま使う
- 商用利用条件を確認せずにAIサービスを使う

もちろん、生成画像を個人的に作って鑑賞し、自分や家族など限られた範囲で楽しむ私的使用に当たる場合は、上記の公開・配布・販売と同じ扱いではなく、著作権者の許諾が不要となることがあります。ただし、個人で作った画像でも、SNSやWebサイトで公開したり、印刷物として配布したり、販売したりする場合は私的使用の範囲を超えるため、既存の著作物との類似性や依拠性、利用するサービスの規約などを確認する必要があります。
また、著作権以外にも、商標権、肖像権、パブリシティ権、不正競争防止法などが関係する場合があります。有名人、企業ロゴ、商品パッケージ、既存キャラクターを含む画像は避けた方が安全です。
生成AI画像を業務で使うときの確認項目
生成前
- 商用利用できるサービスか確認する
- 無料プランと有料プランで利用条件が違わないか確認する
- 入力した画像や情報が学習・保存される条件を確認する
- 他人のイラストを参照画像として無断で使わない
- 特定の作家や既存キャラクターに似せる指示をしない
生成後
- 既存キャラクターや有名作品に似ていないか確認する
- ロゴ、署名、透かし、不自然な文字が入っていないか確認する
- 人物や商品を含む場合は、肖像権や商標も確認する
- 重要な用途では画像検索などを使い、酷似する既存作品がないか確認する
- 使用したサービス、生成日、プロンプト、修正履歴を保存する
公開後
- どの媒体に使ったか記録する
- 元画像と編集後画像を保管する
- 問い合わせが来た場合の社内窓口を決める
- 問題を指摘された場合は、勝手に責任を認めたり金額に同意したりせず、事実を保存して専門家へ相談する
過去の制作物も一度確認した方がよい
新しい制作物だけを安全にしても、過去のPDFや古いページに出所不明の画像が残っていれば、問題が後から発覚する可能性があります。
一度、次のものを確認しておくことをおすすめします。
- Webサイトの古い投稿と固定ページ
- ダウンロードできるPDF
- 過去の広報誌、会報、チラシ
- SNSの投稿画像
- 社内共有フォルダのテンプレート
- 制作会社から納品された画像
- 前任者が作ったPowerPointやWordのひな型
すべてを一度に確認できない場合は、現在もインターネットから閲覧できるもの、継続して再利用しているもの、外部配布しているものから優先します。
出所が分からない画像は、そのまま使い続けない方が安全です。正規の素材へ差し替えるか、生成AIで新しく作る方法があります。
画像を使う前に、確認する仕組みを作る
今回の問題は、一つのイラストだけの話ではありません。
企業の中で、画像の出所と利用条件を確認する仕組みがなかったことが本当の問題です。
「フリーだと思った」という説明では、会社を守れません。
今後は、次のいずれかに限定するルールが必要です。
- 自社で制作したもの
- 契約した制作者から納品されたもの
- 購入履歴と利用条件を保存している素材
- 利用規約を確認し、証拠を残したフリー素材
- 商用利用条件を確認した生成AIで新規に作ったもの
生成AIは、イラストを無制限に安全利用できる魔法の道具ではありません。
しかし、既存画像を探して「たぶん大丈夫だろう」と使う方法より、独自の内容を具体的に指示して新しい画像を作り、生成記録を残す方が、著作権上のリスクと確認作業を大きく減らせます。
請求を受けてから過去の資料を全部調べるより、使用前に数分確認する方がはるかに負担は小さくなります。
画像を使う前に確認する。
確認できない画像は使わない。
必要な画像は、自分で作るか、生成AIを正しく使って新しく作る。
この運用を会社のルールにすることが、現実的な再発防止策です。
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生成の仕組みと学習に使う情報を確認するには、AI(生成AI)、学習データを参照してください。
参考資料
※本記事は、著作権と生成AIに関する一般的な情報を整理したものです。個別の請求への対応、損害額、侵害の成否などは具体的な事情によって異なります。実際の紛争については弁護士へ相談してください。