結論
機密性の高い会議を文字起こしする場合は、録音データ、文字起こしデータ、会議録を指定したPCの内部で完結させます。録音はボイスレコーダーを基本とし、PCへはUSB接続などネットワークを介さない方法で取り込みます。
クラウドへ自動同期する録音アプリ、文字起こしサービス、共有フォルダを使わないことが、この運用の前提です。
対象にする会議と事前ルール
顧客情報、見積、採用、人事、契約、未公開の計画などを扱う会議を対象にします。録音する目的、保管期間、閲覧できる人、会議録の配布先を事前に決めます。参加者には録音することと利用目的を伝えます。
録音しない会議、録音だけ残す会議、正式な会議録を作る会議を分けると、不要なデータを増やさずに済みます。
外部に漏れてはならない情報は、取扱いをルール化する
個人のプライバシーに関わる情報、会社の機密、営業情報など、外部へ漏れることが厳禁の会議内容は、担当者の判断だけに任せず、録音から削除までの取扱いをルール化します。
最低限、次の項目を決めます。
- 録音・文字起こしをしてよい会議と、してはいけない会議
- 録音する目的、参加者への説明、会議録の配布先
- 録音データ、文字起こし原文、確定会議録を閲覧できる人
- 保存先、保管期間、削除する担当者と確認方法
- メール・外部共有が必要になった場合の承認者と送信方法
- 誤送信、端末紛失、マルウェア感染などが起きた場合の報告先
情報の重要度によって扱いを分けます。外部送信を認めない情報は、メール添付、チャット、クラウドストレージ、私物端末へのコピーを禁止する対象として明確にします。
ネットワークから遮断したPCで作業する場合
より厳格に扱う場合は、文字起こし専用PCを社内LAN・Wi-Fi・インターネットから切り離して使います。録音機材からUSBケーブルでデータを取り込み、文字起こしと会議録作成をそのPC内で完了させます。
ただし、遮断したPCにも運用が必要です。文字起こしソフト、音声モデル、OS、セキュリティソフトは、承認した手順で更新します。更新用データを外部媒体で持ち込む場合は、持込元の確認とウイルス検査を行います。未知のUSBメモリや私物端末は接続しません。
会議録を外部へ渡す必要がある場合は、遮断PCから直接メールを送らず、承認済みの受け渡し手順へ移します。移すのは必要な範囲に確定した会議録だけとし、録音データや文字起こし原文は原則として移しません。
外部へ出さない文字起こしフロー
- 録音する
ボイスレコーダーへ保存します。スマートフォンを使う場合は、クラウド同期、共有、バックアップ、音声認識の自動送信が無効であることを確認します。確認できない場合はボイスレコーダーを使います。 - PCへ取り込む
録音機材をUSBケーブルで指定PCへ接続し、会議ごとの作業フォルダへコピーします。メール、チャット、クラウドストレージ、ネットワーク共有へは置きません。 - PC内で文字起こしする
音声データを外部へ送信しない、ローカル実行型の文字起こしソフトを使います。初回に言語モデルを取得する製品もあるため、機密音声を処理する前に、オフラインで動作する条件と外部通信の有無を確認します。 - 会議録を確認・確定する
自動文字起こしの誤りを人が確認し、決定事項、担当者、期限、保留事項を会議録へまとめます。録音データと文字起こしの原文を誰が読めるかも分けます。 - 保存・削除する
確定した会議録、録音、文字起こし原文の保管先と削除日を記録します。保存が必要なデータは、外部公開されない暗号化済みのバックアップ先へ保管します。
録音機材の選び方
| 方法 | 使える条件 | 確認すること |
|---|---|---|
| ボイスレコーダー | 会議録音専用として管理する場合 | USBでPCへ取り込めること、録音データの保管・削除方法、端末の紛失対策 |
| スマートフォン | USB接続で指定PCへ直接取り込め、録音データをクラウドへ同期しない場合 | iCloud、Googleドライブ、端末バックアップ、録音アプリの共有・自動文字起こし・送信設定 |
| オンライン会議の録画 | サービスの保存先と利用規約を確認し、外部保存を許容できる場合 | 本ガイドの「外部に出さない」運用とは別に扱う。録画・文字起こしの保存先と閲覧権限を確認 |
PC内で完結させるために必要なもの
- 会議録専用または利用者を限定したPC
- 端末ログイン用のアカウント、画面ロック、ディスク暗号化、更新済みのOSとセキュリティソフト
- オフラインで音声を処理できる文字起こしソフトと、ソフトの入手元・更新手順
- 録音データ、文字起こし原文、確定会議録を分けるフォルダとアクセス権限
- 外部公開されないバックアップ先と、保管・削除の担当者
PCがネットワークにつながっているだけで、直ちに録音が外部へ送信されるとは限りません。ただし、同期ソフト、ブラウザーのアップロード、アプリの自動送信、マルウェアなど別の経路があります。文字起こし作業中はネットワークを切断する、または外部通信を許可しない設定にする方法を検討します。
メールで会議録を送るときの注意
メール送信は、PC内で完結する文字起こしとは別の外部送信です。送る必要がある場合は、録音データや文字起こし原文ではなく、必要な範囲に整理した確定会議録だけを送ります。
- 宛先、CC・BCC、添付ファイル、送信先の組織を送信前に別の人が確認する
- 個人情報、見積、契約情報などは、社内規程で認められた暗号化・安全な受け渡し方法を使う
- パスワード付きファイルと同じメールでパスワードを送るだけでは、誤送信対策になりません
- 送信済みメール、添付ファイル、PC上の一時ファイルも保管期間に合わせて管理する
オフライン文字起こしの候補と使用例
次の候補は、音声データをPC内で処理する構成を作れるものです。導入前に、音声データ、文字起こし結果、ログ、モデルの保存先と外部通信の有無を確認します。
| 候補 | 向く場合 | 使用例 |
|---|---|---|
| Buzz | まず1件の会議録で試したい場合 | ボイスレコーダーの音声ファイルをPCへUSBコピーし、Buzzへ読み込んで文字起こしします。出力したテキストを担当者が確認し、会議録へまとめます。 |
| Subtitle Edit + Whisper.cpp | 音声を聞き直しながら文字を修正したい場合 | ローカルのWhisper.cppを選び、会議音声を文字起こしします。時刻を確認しながら固有名詞、数字、決定事項を修正します。 |
| whisper-standalone-win | 同じ手順で複数の録音を処理したい場合 | 指定フォルダへ音声を入れ、決めたコマンドでTXTまたは字幕形式の文字起こしを出力します。操作担当者と出力先を固定できます。 |
初回のアプリ・音声モデル取得や更新には通信が必要になる場合があります。機密会議を処理する前に、セットアップを完了させ、ネットワークを切断した状態でダミー音声を使って動作を確認します。
どの候補でも、文字起こし結果をクラウドの要約サービスへ貼り付けると外部送信になります。会議録の作成まで外部に出さない場合は、PC上の文書ソフトで人が整えます。
参考:Buzz、Subtitle Edit、whisper-standalone-win
小さく試す運用例
最初は社内の定例会議1件で試します。録音から会議録確定までを指定PCだけで行い、次を確認します。
- 録音アプリやスマートフォンがクラウドへ同期していないか
- 文字起こしソフトが音声を外部へ送信しない設定になっているか
- 担当者以外のPCアカウントから、録音・文字起こし原文を読めないか
- 会議録の誤りを人が確認できるか
- 会議終了後に録音・原文をいつ削除するか決められるか
作業時間、誤字の修正量、会議録の完成までの時間、閲覧権限の設定漏れを記録し、対象会議を増やすか判断します。
人が確認すること・注意点
- 自動文字起こしは、話者の聞き違い、固有名詞、数字、否定表現を誤ることがあります。決定事項と期限は必ず人が確認します。
- 「ローカル処理」と表示されていても、初回設定、更新、辞書・モデルの取得、障害報告などで外部通信する製品があります。導入前に仕様を確認します。
- 端末の盗難、紛失、マルウェア、権限設定の誤りは、クラウドを使わなくても情報漏えいの原因になります。
関連する用語
関連リンク
外部クラウドとの違いとPC内処理の動作環境を確認するには、クラウド、OS(基本ソフト)を参照してください。
情報の確認先
- IPA:不注意による情報漏えいへの対策:メール誤送信、外部持出し、送信前確認の考え方
- IPA:中小企業・小規模事業者向け情報セキュリティ対策資料:メール誤送信対策と無線LAN利用時の注意